上野駅エキュート「ASANOYA」

今回発行した「上野不動産新聞」の食味散歩で「ASANOYA」を書きました。以下は掲載記事です。
通路との間を大きなガラスで仕切られた細長いスペースに籐の椅子と、小さなテーブルの二人掛けの席が二列に並んでいる。ざっと20席位ある。ガラス窓に向かって座ってコーヒーを啜り、紙袋の口を開いてパンを齧る。「そういえば軽井沢の浅野屋に寄ったことがあったっけ。」のんびりした想いのなかで軽井沢で暮らした20年前頃のことを追想する。確か、旧軽井沢の店に寄ってブルーベリーのジャムを買った気がする。「そういえば、良く泊まった万平ホテルの朝食のパンは浅野屋のだったのかなー」
齧っている浅間山の名前のついたこげ茶色の三角パンはクルミが入っていてほろ苦く、あっさりした甘さで、歯ごたえが何とも言えない。観光客で混雑する軽井沢銀座の浅野屋のそばの小道を抜けて、教会の前を通って鹿島の森に入る。瞑想の霧の中を木立としゃれた別荘が次々と現れる道を辿ってゆく。
そういえば、七月の霧の朝、万平ホテルの周りや、鹿島の森を散歩したものだった。
上野エキナカのこのASANOYAはその気振りも見せないが、私にはあのころの軽井沢に通じている扉があるのが見えている。

 

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