食味散歩「韓国料理 満月」

店は当社から表通りを東に歩いてすぐのところにあります。

社員と昼食に良く行く店のひとつです。
「営業というものはだねぇ、物件そのものを売るんではないんだよ。無料のサービスをどれだけ付けられるかによるんだよ。」
私はいつもの石焼ビビンバ
を頼み、料理がくるのを待つ間に、仕事の先輩としての教えを新しい社員に聞かせます。
熱く焼けた石鍋と、3つの小皿の乗ったお膳が届きます。鍋の中身のご飯と、具の上に辛いジャンを乗せて、スプーンでかき混ぜると、パチパチと焦げる音がして、湯気と、食をそそるもののこげるにおいが立ちのぼります。
少し辛い、熱々のまぜご飯を喉にかき込むと、じきに、汗が顔に吹き出てきます。二日酔いのうっとうしい気分がみるみる飛んでゆく、気持ちの良い汗です。汗を吹き吹き石鍋のビビンバを食べます。美味しい食べ物を食べるときはひたすら食べることに熱中してしまいます。
食べ終わってから、「皆、早く一人前の営業マンになってもらいたい」と、社員にとって食事をまずくする話を話すつもりでいます。

春の予感のなかで考える

節分を過ぎると暦は春になります。
まだ底冷えのする冬の寒さの底に春の予感がかすかに始まっているのが分かります。

春を前に最初に咲く花が梅の花で、そこここから梅の便りが届きだしました。
ある日、上野公園の清水観音堂の近くの大木の集まる木陰の暗い片隅に菅原道真の『東風吹かばにおい起こせよ梅の花あるじなしとて張るな忘れそ』の歌碑があって、そばに紫に近い紅梅が一本凍える寒さのなかで咲いていました。湯島天神の梅はもう見ごろのようです。伊豆の河津桜も満開なのをテレビで見ました。
日一日と行きつ戻りついしながら春は確実な足取りでちかずいてきます。
誰にとっても、春の足音が遠くから聞えてくると思える頃は、嬉しくなり、心が弾んできます。ある日、公園の隅の陽だまりに水仙の黄色い花が咲いているのを見つける。別のある日、黄梅が寺の前に木一杯に咲いているのを発見する。
次々と新しい春を見つける喜びがなんともいえず嬉しい、一年のなかで春を待つ二月が一番好きな月だと思える今日この頃です。